表紙 事業者向け事例集 タイトル、 これって、差別? ボリューム2 障害を理由とする差別解消に関する相談事例集 発行、社会福祉法人名古屋市社会福祉協議会、名古屋市障害者差別相談センター はじめに 平成28年4月に障害者差別解消法が施行され、同年8月に名古屋市障害者差別相談センターを開設しました。この間、当センターでは約2,000件のご相談をお受けし、そのうち、約300件が「障害を理由とする差別」に関する相談じつ件数で、対応延べ件数は約5,000件となっています。 相談の内容としては、「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮の不提供」に関すること、「環境の整備」に関する申し入れなど、障害者差別解消法に基づく対応が可能なものから、障害を理由とする差別ではないが、生活上のトラブルに関するものまで多岐にわたっています。 令和3年5月に障害者差別解消法が改正され、令和6年4月から民間事業者による合理的配慮の提供が義務化されることとなりました。合理的配慮の提供に関して、事業者の皆様からは心配や不安があるということをお聞きしています。当センターへのご相談でも「どこまで配慮したらよいか」、「障害のあるお客様から求められたらどのようなことでもしないといけないのか」など、様々なお声をお聞きします。 合理的配慮とは、障害のある人を優遇するものではなく、障害があってもなくても同じ水準のサービスが享受できるように、できる範囲でお手伝いをするものです。事業者の皆様が普段の仕事でお客様に対して行っているサービス提供の延長線上にあるものであり、決して“特別扱い”ではありません。難しく考えずにお客様の困りごとに目を向けて話を聞き、何をすれば同じ水準のサービス提供ができるのかを一緒に考えていただく姿勢が大切です。合理的配慮の提供は、一つの正解があるのではなく、配慮を求めた障害のある人と事業者の皆様が建設的対話を通じて実現するものです。 今回、当センターでは、事業者の皆様に、障害の理解や合理的配慮の提供について考えていただくきっかけになればと事例集を発行することとしました。皆様の取り組みの貴重なリソースとして、ご活用いただけたら幸いです。 令和6年3月 掲載した事例は、当センターに実際にいただいた相談をもとに加工しています。 目次 1、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、1ページ 2、名古屋市障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例、2ページ 3、相談事例 事例1、セミセルフレジの操作のサポートを断られた(視覚障害)、3ページ 事例2、セルフサービスの飲食店でサポートを断られた(肢体不自由)、4ページ 事例3、賃貸住宅の入居契約を断られた(精神障害)、5ページ 事例4、盲導犬同伴での入店を断られた(視覚障害)、6ページ 事例5、医療機関で胃部X線検査を断られた(聴覚障害)、7ページ 事例6、コンサート会場で大声をあげる人への対応(知的障害)、8ページ コラム、障害のある人の家族としての思い、9ページ 事例7、車いすでの入店を断られた(肢体不自由)、10ページ コラム、共生社会の実現に向けて思うこと、11ページ 事例8、買い物のサポートはどこまでしたらいいの?(視覚障害)、12ページ 事例9、英会話教室で入会を断られた(精神、発達障害)、13ページ 事例10、団体信用生命保険の加入を断られた(聴覚障害)、14ページ 事例11、学校で個別に配慮してもらえない(発達障害)、15ページ 事例12、契約手続きの代筆を断られた(視覚障害)、16ページ 事例13、スポーツジムで介助者の入会を求められた(盲ろう)、17ページ 事例14、手話通訳者の同行を認めてくれない(聴覚障害)、18ページ コラム、誰一人取り残さないサスティナブルな社会をめざしませんか!?、19ページ 4、事業者の障害者差別解消に関する取組紹介 三菱UFJ銀行、名古屋営業部、20ページ レゴランド・ジャパン、21ページ 5、参考情報、22ページ 6、障害者差別に関する相談窓口、24ページ 1ページ 1、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成28年4月1日施行) 令和3年の法改正により、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。この改正法は令和6年4月1日から施行されます。 (1)法律で定めていること  障害のある人への差別をなくすことで、障害のある人もない人も共に生きる社会をつくることをめざしています。 障害者とは、心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会の中にある障壁(バリア)によって、継続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人です。 障害者手帳のない人や障害のある子どもも含みます。 事業者とは、商業などの事業を行う企業や団体、店舗であり、営利・非営利、個人・法人の別は問いません。ボランティア団体、サークル、町内会なども含みます。 行政機関などや事業者に、障害を理由とする「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」を法的義務として求めています。 (2)不当な差別的取扱いとは? 障害を理由として、正当なりゆうなく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、障害のない人には付けない条件を付けたりするなど、障害のある人を不利に扱うことです。 具体例、必要がないにもかかわらず、介助者の同行を求める。障害があることを理由に契約を拒否する。 (3)合理的配慮の提供とは?  障害のある人から何らかの配慮を求められたときに、負担になりすぎない範囲で、その人の活動を制限しているバリア(社会的障壁)を取り除くために必要で合理的な配慮を行うことです。 具体例、棚の高い所に置かれた商品などを取って渡す。筆談、読み上げ、手話、フリガナつき文書など、本人が希望する方法でわかりやすい説明をする。 (4)環境の整備とは? 誰もが使いやすいよう設備や建物をバリアフリー化したり、さまざまな情報を誰もが平等に得られるよう機器を導入したり、職員研修を行うことなどです。 (個別の求めに応じて対応する「合理的配慮の提供」に対して、不特定多数の障害のある人向けに、設備などを事前に整えておくことを「環境の整備」と言います。) 知ってる? 障害の「社会モデル」 障害とは、心身の機能の障害を指すもの(医学モデル)ではなく、社会における様々な障壁との相互作用により生じるものという考え方。 この法律では、「社会モデル」の考え方を取り入れています。 2ページ 2、名古屋市障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例(平成31年4月1日施行、令和6年4月1日改正) (1)私たちがめざすまち この条例では、市・事業者・市民が一体となって、障害や障害のある人への理解を深め、障害を理由とする差別の解消の推進に取り組み、みんなが安心して共に暮らせるまち・なごやをつくることをめざしています。 (2)「障害を理由とする差別」に関する相談・解決のしくみ 名古屋市では、「障害を理由とする差別」に関する相談窓口を設置しています。障害のある人やその家族、関係者及び事業者からの相談に応じ、説明や助言、当事者間の調整、関係機関への引継ぎなどを行います。 相手を一方的に非難するのではなく、建設的な対話を通じてお互いの理解を深めることにより、障害を理由とする差別の解消に取り組んでいます。 【相談窓口(24ページ参照)】 名古屋市障害者差別相談センター 地域の相談窓口(区役所・支所、保健センター、障害者基幹相談支援センター) 名古屋市障害者差別解消調整委員会 障害者差別相談センターの調整によっても解決しないときは、申し立てにより市長の附属機関である「名古屋市障害者差別解消調整委員会」から助言・あっせんを行うしくみを設けています。助言・あっせんによっても改善が見込まれない場合は、市長により勧告や公表ができることになっています。 上記条例に関する内容などについて、詳しくは名古屋市公式ウェブサイトでご確認ください。https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000114033.html 【条例に関するお問い合わせ】 名古屋市健康福祉局障害福祉部障害企画課 〒460-8508、名古屋市中区三の丸三丁目1番1号、TEL(052)972-2538/FAX(052)951-3999 3ページ 3、相談事例 事例1 セミセルフレジの操作のサポートを断られた(視覚障害) こんなことがありました 私は視覚に障害があるので、白杖を使っています。近所のスーパーに、セミセルフレジが導入されましたが、音声案内はないので、自分では操作できません。 スタッフにサポートを求めましたが、断わられてしまいました。普通のレジは1台だけありましたが、閉じられていました。いつも利用するスーパーなので困っています。 スーパーの意見 セミセルフレジではスタッフが1人ついてお客様のサポートをしますが、人手不足で手がまわりません。 障害のある人への対応マニュアルを整備しておらず、スタッフへの指導不足がありました。 【解説】お客様の状況にあわせた対応を 無人のセルフレジなどは、待ち時間が短縮でき、混雑緩和につながる一方で、視覚障害のある人など操作が困難な人にとっては、障壁となっている現状があります。 障害のあるお客様の困っていることに目を向け、通常のレジを開けて会計を行うなどの配慮が重要です。 新しい技術を取り入れるときには、それによって新たな社会的障壁が生じないか考えましょう。障害のある人への接客対応マニュアルを整備したり、スタッフ研修を行うなど、ソフト面での環境を整備しておくことはとても大切です。 ここでワンポイント! 視覚障害の特性 ぼやけて見える、まぶしくて見づらい、視野の一部しか見えないなど、見え方や見えにくさには個人差があります。 ・全盲…まったく見えない ・弱視…眼鏡などで矯正しても視力が弱い ・視野狭窄…見える範囲が狭い              4ページ 事例2、セルフサービスの飲食店でサポートを断られた(肢体不自由) こんなことがありました 私は左手にマヒがあります。 飲食店に入ったところ、配膳がセルフサービスのレストランでした。 「障害があり、運ぶのが難しいので食事を席まで運んでほしい」とスタッフにお願いしましたが、「セルフサービスです」と言われ、運んでもらえませんでした。 飲食店の意見 スタッフには接客対応マニュアルに従い、その人に合った接客方法で接客するよう 指導していますが、対応したスタッフは新人で、慌ててしまったようです。 外見からは配慮が必要なお客様とはわかりにくく、誤った対応をしてしまいました。 【解説】ホスピタリティが問われています 外見から判断することなく、お客様の配慮の申し出には、よく耳を傾けて柔軟に対応しましょう。 障害のある人の求める配慮は、障害特性やその時の周囲の状況によって、一人ひとり違います。一見して障害があるとわからない人もいますので、その人に合わせた配慮や心配りをしましょう。 接客対応マニュアルがあるにもかかわらず、現場のスタッフに周知されていなければ、せっかくのマニュアルも無駄になってしまいます。現場のスタッフに周知されてこそ、環境の整備となるのではないでしょうか。 お客様がヘルプマークを付けていたら、「何かお困りですか?」と声をかけてみるのもよいでしょう。 ここでワンポイント! ヘルプマーク 義足や人工関節を使用している人、内部障害や難病の人など、外見からはわからなくても援助や配慮を必要としている人が、周囲の人に配慮を必要としていることを知らせることができるマークです。(JIS規格) 5ページ 事例3、賃貸住宅の入居契約を断られた(精神障害) こんなことがありました 私はパニック障害とうつ病があります。 一人暮らしをするために、不動産仲介会社にアパートを紹介してもらい、いったんは「入居可能」の返事をもらっていましたが、大家さんが「障害のある人はトラブルを起こしやすい」との理由で契約を断られてしまいました。 大家さんの意見 以前、入居していた障害のある人が、近隣トラブルを起こして対応が大変でした。 また何かトラブルがあったら対応が難しいのではないかと心配になり、入居を断りました。 【解説】漠然としたリスクは断る理由になりません 大家さんは、「何かあったら・・・」を理由に入居を断ってしまいましたが、漠然としたリスクや根拠のない心配だけでは、入居を拒否する「正当な理由」にはなりません。 「正当な理由」に相当するのは、サービスの提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て、やむを得ないと言える場合です。 入居に際しては、配慮することがあるか、それを合理的配慮として提供できるかを具体的に検討する必要があります。そのためには、お客様の障害特性についてよくお聞きし、理解に努めることが重要です。 お互いの事情を丁寧に話し合い、コミュニケーションを図りながら対応策を検討することが合理的配慮の提供につながります。 ここでワンポイント! 「正当な理由」の判断の視点 正当な理由にあたるかどうかは、その取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。個別のケースに応じて、総合的・客観的に判断する必要があり、正当な理由があると判断した場合は、障害者にはその理由を説明し、理解を得るよう努める必要があります。 6ページ 事例4、盲導犬同伴での入店を断られた(視覚障害)    こんなことがありました 私は視覚に障害があるので、盲導犬を利用しています。 レストランで食事をしようとしたところ、店員から「犬を連れての入店はできません」と断られてしまいました。盲導犬はペットではないのに…。 レストランの意見 店内にいたお客様の中に犬が苦手な人がいたため、お断りしました。 ランチタイムで混雑しており、犬が苦手なお客様と離れた席をご用意することができませんでした。 【解説】盲導犬の同伴は受入れが前提。周囲への配慮も忘れずに 盲導犬はペットではなく、障害のある人が自立と社会参加をするためのパートナーであり、個人の好き嫌いで入店を拒否することはできません。 犬の苦手なお客様や犬アレルギーのお客様がいる場合、可能な範囲で席を離すなどの配慮は必要ですが、離れた席の用意が難しいときは、事情を説明し、席が空くまで待ってもらうなどの対応が考えられます。盲導犬の同伴を受け入れることを前提として、犬アレルギーなどのあるお客様への配慮もあわせて考えましょう。 盲導犬は、食事中はテーブルの下や椅子のそばで待機するため、ほとんどの場合、広いスペースの確保は必要ありません。スペースに心配がある場合は、「どれくらいのスペースがあれば大丈夫でしょうか?」と確認してみましょう。 ここでワンポイント! 身体障害者補助犬法 補助犬とは、「盲導犬」「介助犬」「聴導けん」の3種類の総称であり、身体障害者補助犬法に基づき訓練・認定されています。不特定多数の人がいる公共の施設やお店などは、補助犬を同伴する人を受け入れる義務があります。 ほじょけんステッカー お店に貼ることで、使用者が安心して利用でき、補助犬に理解のあるお店であることを意思表明することができます。 【参考】厚生労働省「もっと知ってほじょけん」 https://www.mhlw.go.jp/content/000489424.pdf 厚生労働省「補助犬ユーザー受け入れガイドブック:飲食店編 」 https://www.mhlw.go.jp/content/000872316.pdf 7ページ 事例5、医療機関で胃部X線検査を断られた(聴覚障害)  こんなことがありました 私は耳が聞こえません。 先日、健康診断のため、医療機関で胃部X線検査を申し込んだところ、「耳が聞こえないと、検査技師の指示が伝わらないので、内視鏡検査にしてほしい」と断られてしまいました。 何らかの工夫はしてもらえないのでしょうか? 医療機関の意見 胃部X線検査では、体の向きやバリウムの飲み方などの指示を伝えなければなりません。手話通訳者がいても、通訳を見ながらでは台から落ちてしまう危険性があります。 指示がきちんと伝わらないと、きれいに撮れる保証がなく、正しい診断ができない可能性があるので、内視鏡を勧めています。 【解説】本人とよく相談を 多くの医療機関では、聴覚障害のある人が胃部X線検査を行う場合は、原則、本人の希望に沿って実施しています。メッセージボードを利用したり、必要に応じて介助をするなど、その時々で本人と相談して対応することが重要です。 検査時に危険が伴うなど事情がある場合は、ほかの検査をお勧めすることもあると思いますが、その際は丁寧に説明し理解を得ましょう。 初めからお断りではなく、本人とよく話し合い、できることを検討することが大切です。 負担が大きく難しい場合は丁寧に説明しましょう。 ここでワンポイント! 聴覚障害があっても人によって障害の程度は違います。すべての聴覚障害者に指示が伝わらないということではありません。 専門的見地からの助言は大切ですが、本人が選択するのが原則です。メリットとデメリットをお伝えするなど、本人が適切に選択できるように説明していくことが望まれます。 【参考】(社)日本放射線技師会「聴覚障害者のための放射線部門におけるガイドライン」 https://www.jart.jp/docs/cyoukaku_guideline.pdf (公社)日本診療放射線技師会ほか「放医線業務の安全の質管理マニュアルVer.2.1」https://www.jira-net.or.jp/anzenkanri/01_hoshutenken/file/houshasen_kanri_manual_v2.1.pdf 8ページ 事例6、コンサート会場で大声をあげる人への対応(知的障害) こんなことがありました 私はコンサートの運営会社の社員です。 ある日、クラシックコンサートへ家族と一緒に来ていたお客様が、コンサート中ずっと大きな声をあげていました。自分で声を止められないようで、ほかのお客様から多くの苦情が入ってしまいました。 次回コンサートの来場をお断りしてもいいでしょうか。 コンサート主催者の意見 どなたにも楽しく鑑賞いただく環境を提供する責務が主催者にはあります。 障害のあるお客様といえども、大きな声が他のお客様のご迷惑になっているので、次回の来場をお断りすることもやむを得ないと思いました。 【解説】楽しめる方法を一緒に考えましょう 障害の特性が他のお客様の鑑賞の妨げになっている場合、一律にお断りするのではなく、その状態をみて、主催者としてどのようなサポートができるのか、一緒にコンサートを楽しむ方法はないのかを考えましょう。 自分の意思とは関係なく声が出ている場合は、障害の特性と考えられますので、落ち着くための別室を用意することも方法の一つです。別室がない場合は、ロビーなどで一旦お休みいただき、落ち着いたときに入場してもらうような工夫をしてはいかがでしょう。 大切なことは、主催者として配慮できることについて障害のある人と話し合うことです。 そこで、他のお客様から多くの苦情があったことも伝え、次回どのようにするのがよいか一緒に考えましょう。 ここでワンポイント! 障害のある人に対して、「どのように対応したらよいか分からない」というのは、障害特性についてよく理解していないことが原因です。分からないことは本人に聞くなどして、状況に応じて、必要な配慮やサポートができるよう心がけましょう。 ※障害の特性やサポート方法は、22ページに紹介の「こんなときどうする?」を参考にしてください。 9ページ コラム 障害のある人の家族としての思い 名古屋てをつなぐ育成会 濱田智恵実 私の子どもは生後まもなくてんかんを発症して、3歳の時に知的障害の診断を受けました。言葉がなかなか出てこないし、歩くのもうまくならない。悩んで悩んで家から出たくない日もありました。一番悲しかったのは、周りの人からジロジロ見られること。体が大きいのにベビーカーに乗っていたり、しつけの悪い子、落ち着かない子と見られたり…。「どうせ私の苦労なんて誰にもわかってもらえない」と思っていました。 でも、だんだん「周りの人は、ただ知らないだけなんだ。こちらから知ってもらえる努力をしよう」と思えるようになり、今では自分からわが子の特性を話すようにしています。 最近、私が一番うれしかったことは、電車で迷子になった息子が困っていた時に、見ず知らずの大学生が、知的障害があることに気づいて、私のいる駅まで連れてきてくださったことです。「世の中こんな素敵な人もいるんだなあ」と涙が出ました。 そのほかにも、「自分がやってほしいと思うことをお客様にしましょう」と従業員に話しているお店があります。車いすで来店された人にドアを開けたり、障害のある人や高齢者、子どもの買い物を手伝ったり、期間限定のメニューが文字ばかりで、どんな料理かわからない人にはメニューの写真を見せたり、寒そうにしている人には、ひざ掛けをもっていったり…。どれも相手のことを考えた配慮(気遣い)だと思います。 「合理的配慮を提供すること」は難しいことでも、特別扱いすることでもありません。「もし自分がその人だったら何をしてほしいか?」を考えていただきたいのです。 自分が道に迷って困っている時には「誰かに助けてほしい」とか、足が不自由で2階に上がりたいのにエレベーターがどこにあるかわからなかったら「わかりやすいところに表示があるといいな」とか、段差がある時は「手助けをしてもらえるとうれしいな」と思うでしょう。障害が げんいん で騒いでしまう人の家族だったら「静かな落ち着けるスペースがあるとうれしいな」とか「迷惑をかけてしまうけれど、温かい目で見守ってもらえるとありがたいな」と思うことでしょう。 すべての人が障害の有無にかかわらず、一人ひとりの「暮らしにくさ」に気づき、少しでも理解し、温かい気持ちを持ってくださる…そんな社会になったらとてもうれしいです。 10ページ 事例7、車いすでの入店を断られた(肢体不自由) こんなことがありました 私は簡易電動車いすを使っています。 ある日、家族で外食をしようと飲食店を訪れたところ、「うちは車いすはお断り」、と車いすでの入店を断られました。 そこで、車いすを畳んで席へ移ることを伝えましたが、スタッフは「狭いので無理ですね」、と入店を認めてくれませんでした。  飲食店の意見 障害のある人を排除する考えはまったくありません。 店内が狭く、当時混みあってもいたため、スタッフが席の確保は難しいと判断して断ってしまいました。 【解説】車いすは単なる乗り物ではありません 正当な りゆう なく、車いすの使用を理由に入店を断ることは、障害を理由に断ることと 同義です。 混雑していて広い席を確保できない場合の代替案として、席への移乗が可能かを聞いたり、席の用意ができるまで待ってもらう、時間をずらして来店してもらう、またはテイクアウトを提案するなどが考えられます。まずは、障害のある人の意向を聞き、話し合うことが大切です。 ここでワンポイント! 障害のある人への対応方法をスタッフ間で共有しておくことは、お店を気持ちよく利用してもらうためには欠かせないものです。 【参考】一般社団法人、日本フードサービス協会「外食産業における障がい者接遇マニュアル」 https://www.jfnet.or.jp/files/jf_Barrierfree.pdf 11ページ コラム 共生社会の実現に向けて思うこと 当事者相談員の視点から  K相談員 2006年の「障害者権利条約」採択により、障害者に関連した様々な法令が改正・施行され、障害者に対する環境も改善されてきました。その一方で、障害者に対する偏見が根強くあることが浮き彫りとなるような事件や問題が数多く報道されています。 こうした偏見は、これまで障害のない人々中心の考えで社会が営まれてきたことに原因があると思います。「障害があるから何もできないだろう」と障害者を外見のみで判断し、排除されてきました。 私が学生の頃は、分離教育が当たり前でした。近所の子が通う学校には通えず、高校まで養護学校(現:特別支援学校)へ通いました。学校が違うので近所に友人はできず、休みの日には一人で遊んでいました。社会人になってからも、パソコンを使用してデータ入力事務を行うという契約条件で入社したにもかかわらず、数人の障害者が一つの部署に集められ、簡単な手作業(伝票整理など)しか与えられないことがありました。こういったことは、私だけではなく障害のある友人の多くが経験しています。 「このままでは、いけない」と感じた私は、自身のことをわかってもらおうと、パソコンの知識を活かし、操作で困っている人に進んで操作説明をしていたところ、いつしか、パソコン業務を任せてもらえるようになりました。この経験から、「自ら行動すれば周囲の状況は変わる」ということを学びました。 センターで相談を受けていると、障害のある人から「障害者への理解や配慮がない」などの声を聞くことが度々あります。当事者である私としては、自分の思いを主張するだけでは不十分で、問題に対してどうすれば解決できるのか、という視点でもっと話し合おうとする姿勢が双方にひつようなのだと思います。お互いの事情を冷静に話し合えば、このようなことも少なくなると思います。 コミュニケーションを重ねて相手のことを知れば、偏見もなくなり、関係性も変わります。障害の有無に関わらずお互いの理解を深めることができれば、より差別のない共生社会が実現していくと思います。 12ページ 事例8、買い物のサポートはどこまでしたらいいの?(視覚障害) こんなことがありました 私は商業施設の管理部門で働いています。 視覚障害のあるお客様は、来店するといつも買い物のサポートをスタッフに依頼します。 スタッフはその都度持ち場を離れてサポートしていますが、数店舗を案内する場合もあります。 どこまで対応したらよいでしょうか? 商業施設の意見 スタッフから「持ち場を離れている間に、何か問題が起こったらどうするのか」という声があがっています。 今までサポートを断ったことはありませんが、人員不足もあり、対応に苦慮しています。 【解説】こんな対応はいかがでしょう 視覚障害のある人も障害のない人と同じように施設を利用するにはどうしたらよいか、という視点で考えることが重要です。 現行の対応がスタッフにとって過重な負担であれば、対応方法を見直してみましょう。 合理的配慮の提供が求められるのは、施設内テナントも同様ですので、各テナントに協力を仰ぎ、お客様を次の店舗までリレー方式で案内していく方法も考えられます。 他に方法はないか各テナントと話し合い、アイディアを出し合うのもよいでしょう。 スタッフが接客中などにより、すぐに対応できないことがある場合は、障害のある人に事情を丁寧に説明し、理解が得られるよう努めましょう。 ここでワンポイント! 過重な負担とは 事務・事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用・負担の程度、事務・事業規模、財政・財務状況などを考慮し、具体てき場面や状況に応じて、総合的・客観的に判断します。 個別の事案ごとに検討する必要があり、過重な負担と判断される場合は、その理由を説明し、理解を得るよう努めることが大切です。 13ページ 事例9、えいかいわ教室で入会を断られた(精神・発達障害)  こんなことがありました 私の息子は精神障害と発達障害があります。 息子が通いたがっていた、えいかいわ教室の体験会に、障害があることを伝えた上で申し込みをしました。 しかし、体験会終了後、えいかいわ教室の先生から「意思疎通が難しい。別の教室に行った方がいい」と言われ、入会できませんでした。 えいかいわ教室の意見 体験会は、入会希望者の状況に関わらず、一旦は受入れることにしています。 入会に際しては、授業に集中できること、講師やほかの生徒とコミュニケーションが取れることが不可欠だと考えており、障害を理由に入会を断ったつもりはありません。 こちらの伝え方が良くなかったと反省しています。 【解説】お客様に寄り添った対応を 入会を希望する人の障害特性を正しく理解した上で、えいかいわ教室において必要とされる入会要件を相手に丁寧に説明しましょう。 入会できる、できないだけで考えるのではなく、対応可能なカリキュラムを提案するなど、障害のある人の希望に応じて代替手段を検討することも大切です。 総合的・客観的に受入れが難しいと事業者が判断した場合には、障害のある人の理解が得られるよう説明をすることが重要です。 ここでワンポイント! 障害の現れ方は一人ひとり異なるため、個々に応じた適切な配慮が必要となります。また、障害は1つだけとは限らず、重複する場合もあります。 精神障害と発達障害 精神障害:統合失調症、うつ病、躁うつ病、てんかん、アルコールや薬物依存症などの精神疾患のために、日常生活や社会生活がしづらくなることをいいます。 発達障害:脳機能の発達が関係する生まれつきの障害で、「自閉スペクトラム症」(AえすD)や「注意欠如多動症」(ADHD)、「限局性学習症」(SLD)などがあります。 14ページ 事例10、団体信用生命保険の加入を断られた(聴覚障害)  こんなことがありました 私は聴覚障害があり、身体障害者手帳2級を所持しています。 住宅ローンを組むにあたり、団体信用生命保険へ申し込みをしたいのですが、すでに手帳を取得しているため、加入が認められませんでした。 保険会社の意見  障害者手帳を持っていても加入できる場合もあり、一律に障害者だから加入できないというものではなく、審査基準により判断されます。  審査基準は保険会社により決められており、詳細については社外秘となります。 【解説】ルールなどを点検してみませんか 「すでに障害者手帳を持っている人は加入できない」ではなく、抱える事情を考慮した上で状況に応じて検討し、個別に対応することは必要な合理的配慮と考えられます。 保険や金融商品の契約では、通常、審査基準が「社外秘」となっていることから、差別的取扱いがあったかどうかを判断することは困難ですが、「障害があると、統計的にリスクが高い」などの具体的な根拠を示した説明もなく、審査基準により判断するという説明では、加入を断るりゆうとして障害のある人の理解は得られないかもしれません。 「審査基準」や「会社のルール」などの中に、障害のある人にとって「社会的障壁」になるものはないか、不当に障害のある人を排除していないか、基準やルールなどの内容を、一度点検してみてはいかがでしょうか。 ここでワンポイント! 「社会的障壁」とは 障害のある人にとって、日常生活や社会生活を営む上で「障壁」となるものです。  障壁となる一例  事物:段差がある、点字ブロックが途切れている  制度:資格がとれない、試験が受けられない  慣行:障害者の存在を意識していない習慣  観念:障害者だから仕方ないといった偏見 15ページ 事例11、学校で個別に配慮してもらえない(発達障害) こんなことがありました 発達障害の傾向がある息子は、学級での集団指示が伝わりにくいところがあるので、「個別に声かけをしてもらえないか」と担任に相談しましたが、なかなか聞き入れてもらえません。 そのため、息子は集団指示が理解できず、注意ばかり受けているようです。 通常の学級で配慮を得ることは難しいのでしょうか。 学校の意見 通常の学級では、集団指示をおこなっています。 担任は1人しかおらず、付きっきりで声をかけることはできません。 【解説】伝わる方法を一緒に考えましょう 学校側は、配慮の申し出に対し「できません」と断るのではなく、他に何か手立てはないか、生徒や保護者と一緒に考える姿勢が大切です。 スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門職への相談も検討し、双方が納得できる解決策を話し合いましょう。 言葉の指示だけでは理解することが難しい場合には、個別の声かけの他に、いちにちのスケジュールや授業の流れを、視覚的に見える形で提示したり、座席を学びやすい位置に配置することも合理的配慮の提供として考えられます。 ここでワンポイント! インクルーシブ教育システムについて インクルーシブ教育システムとは、「人間の多様性の尊重などの強化、障害者が精神的及び身体的な能力などを、可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とする、との目的のもと、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組み」 16ページ 事例12、契約手続きの代筆を断られた(視覚障害)    こんなことがありました 私は視覚障害があるので、普段はヘルパーさんに代読や代筆をお願いしています。 先日、ヘルパー事業所の契約更新をするにあたり、同事業所のヘルパーに代筆をお願いしたところ、事業所の責任者から「この契約について、ヘルパーは代筆できない」と断られてしまいました。 家族もおらず、他にお願いできる人がいないので困っています。 ヘルパー事業所の意見 ヘルパーが代筆することで、利益相反を疑われたり、本人との理解の相違によるトラブルが後々起こらないように、当事業所の職員以外に代筆を依頼するよう、本人にお願いしました。 【解説】こんな合理的配慮はできませんか 障害のある人の困っていることに着目して、事業所としてできることを検討しましょう。 過重な負担であれば、障害のある人に丁寧に説明し理解を得るとともに、他に代替案がないか一緒に考えることが大切です。 職員が代筆する場合、契約内容を読み上げて内容の確認を行い、複数の職員の立ち会いのもと、本人に何を記入しているかを説明しながら対応してはいかがでしょう。 自筆の場合、差し支えないところは事業所が記入し、自筆が必要な部分のみサポートすることも考えられます。どのようなサポートが必要かは本人に確認しましょう。 事業所または障害のある人が、第三者の立合いなどを依頼する方法も考えられます。 ここでワンポイント! 合理的配慮は、求められた事業者が、過重な負担の有無などを勘案し、提供の可否を判断することになります。提供が難しい場合は、代替案を一緒に考えていくことが大切です。 その際には、障害のある人の支援者に相談することも一つの選択肢ですので、双方でよく話し合うことが必要です。 17ページ 事例13、スポーツジムで介助者の入会を求められた(盲ろう) こんなことがありました 私は視覚障害と難聴があるので、外出するときは介助者(ガイドヘルパー)が同行しています。 スポーツジムを利用するため、入会手続きをしようとしたら、介助者の入会も求められました。 「介助者はジムの設備は使わない」と説明しましたが、対応は変わりませんでした。 スポーツジムの意見 スタッフの認識に誤りがあり、介助者は介助のみで設備を利用しないのであれば入会の必要はありません。 施設管理のために入館者の把握が必要ですので、毎回同じ介助者にしてください。 【解説】よく話し合いましょう ガイドヘルパーは、外出に同行し、必要な情報の提供や移動などの援助を行います。あくまでも目的は障害のある人の移動支援ですので、同じように入会を求めるのは適切とは言えません。 障害のある人が施設の利用時に何に困るかに着目し、事業者としてどのようなお手伝いができるかを考えることが大切です。介助などの対応ができない場合、お客様と相談の上、ガイドヘルパーの同行を認めていくことも合理的配慮の提供となります。 入館者を把握する必要がある場合でも、ガイドヘルパーは常時携行する身分証などにより氏名などを確認することができます。 障害のある人とスポーツジム、双方で話し合い、できることを検討することが大切です。 ここでワンポイント! 不当な差別的取扱いについて 障害のない人には提示しないような「条件付け」に加えて、障害のある人の車いす、補助犬、その他の支援機器の「利用」や介助者の「付添い」を拒むことは、不当な差別的取扱いに該当します。 18ページ 事例14、手話通訳者の同行を認めてくれない(聴覚障害) こんなことがありました 私は聴覚障害があり、日常のコミュニケーションは手話です。 仕事に役立つと思い、キャリアアップセミナーの受講を申し込みました。そのとき、手話通訳者が同行することを伝えたら、「手話通訳者の参加は認められません。同行するなら、1名分追加の受講料を、支払ってください」と言われました。 手話通訳者は受講者ではないと理解してもらえません。 セミナー主催者の意見、 会社の運営体制が整っておらず、手話通訳者の同行について即答することができませんでした。障害者差別をするような意図はありません。 今後は社内ルールを見直し、スムーズに対応できるよう体制を整えます。 【解説】聞こえない人への情報保障に配慮を セミナーの申込じに、障害のある人から手話通訳の申し出があった場合は、合理的配慮の提供として、主催者側で手話通訳者を手配することを検討しましょう。 過重な負担であれば、理由を丁寧に説明し、他に情報を保障できるような代替案はないか話し合うことが大切です。 一方で、障害のある人から「手話通訳者を自分で手配するから同行を認めてほしい」という申し出があった場合は、合理的配慮の提供として同行を認めるかどうかを検討しましょう。 手話通訳者の役割は、手話を用いて聴覚障害のある人のコミュニケーションをサポートすることです。セミナー受講が目的ではありませんので、受講料の支払いを求めることは、適切とは言えないでしょう。 ここでワンポイント! 聴覚障害のある人と電話でコミュニケーションできるサービス 電話リレーサービス 聴覚や発話に障害のある人と聞こえる人の間に、通訳オペレータが仲介して、双方向に同時通訳する公共インフラです。 通訳オペレータが、障害のある人とスマホなどの画面上で「手話や文字」でコミュニケーションを図りつつ、聞こえる人に「声」で伝える仕組みのサービスです。 【参考】日本財団電話リレーサービスhttps://www.nftrs.or.jp/ 19ページ コラム 誰一人取り残さないサスティナブルな社会をめざしませんか⁉ ある企業の社員さんからの質問 「合理的配慮について、当事者から求めがなければしなくてもよいの?」という質問がありました。 確かに法律上では合理的配慮の提供に関しては「障害者から意思の表明があった場合において…」と書かれています。 皆さんはどう思いますか?「法律上そうなっているのだから…」、「それだとなんだかやさしくないなぁ」、いろいろな考え方があると思います。 皆さんが所属する企業としてはどうでしょうか? SDGsの観点からはどうでしょうか? 障害を理由とする差別の解消に取り組むことは、お客様にどのように向き合うのかの表れでもあるのです。 合理的配慮はお客様に対するサービス提供の延長線上にあるもの 私たちは、日常生活の中で、無意識のうちに何らかの配慮をしているのではないでしょうか。例えば、聞こえづらい高齢者には、ゆっくり大きな声で話すなどです。企業においてもお客様が自社の提供するサービスを利用するうえで困っているのであれば、ごく自然にサポートしていると思います。これと同様に、障害のある人が求める合理的配慮は、特別扱いではなく、障害のない人と同じ水準のサービスを受けるために必要なお手伝いをお願いしているものなのです。そう考えれば、合理的配慮はお客様に対するサービス提供の延長線上にあると言えるのではないでしょうか。 出前講座(障害者差別解消講座)のすゝめ 障害者差別解消講座は、名古屋市内の企業や団体に対して無料で実施しています。合理的配慮とは何か、義務となるサービスの範囲とは何かなど、障害のあるお客様への対応に関する疑問にお答えします。社員教育の一環としてぜひご活用いただき、「誰一人取り残さないサスティナブルな社会」を実現させましょう! 20ページ 4、事業者の障害者差別解消に関する取組紹介 三菱UFJ銀行、名古屋営業部 安心・快適な店舗づくりのため、ハード、ソフト両面での環境整備に取り組んでみえる、三菱UFJ銀行、名古屋営業部の方にお話を伺いました。 安心・快適なサービスへの取り組み 三菱UFJ銀行、名古屋営業部では、自動ドアやスロープ、点字ブロックの設置の他に、言語・聴覚に障害のあるお客様に対応するための筆談器(注釈1)を配備し、エントランスには視覚に障害のあるお客様の入店をサポートするためのインターホン付き触知案内図(注釈2)を設置しています。インターホンから呼びかけがあった場合には、行員や警備員などが連携し、スムーズに窓口案内できるよう、体制を整えています。 また、障害特性により、窓口での手続きが難しいお客様には、個別に話を伺い、お客様に負担がかからないように配慮しています。 (注釈1)、言語・聴覚障害のある人向けのコミュニケーションツール (注釈2)、視覚障害のある人が触れてわかるよう、点字などで表記されている案内図 障害のあるお客様への対応事例 障害により騒がしい環境が苦手なお客様の来店について、ご家族から相談を受けました。障害の特性や必要とする配慮を予め伺うなど、お客様と当行で対話を重ね、混雑の少ない日時を調整しました。当日は別室で対応し、丁寧な説明を心がけたので、お客様も落ち着いて手続きできました。 従業員への教育 このようなお客様一人ひとりに寄り添った応対ができるよう、三菱UFJ銀行では、「高齢者・障がい者応対スキル向上研修」や「ユニバーサル応対研修」などを定期的に実施して、従業員の対応力向上に努めています。 今回の取材を通じて 対応事例では、お客様の特性を理解し、そのときの状況に応じてできる対応をすること(合理的配慮の提供)が、従業員により体現されていました。ハード面の環境整備も大切ですが、ソフト面での「対話しながらできる対応を一緒に考える姿勢」こそが、障害のある人が事業者の みなさま に何より求めていることなのかもしれませ 21ページ 4、事業者の障害者差別解消に関する取組紹介、 レゴランド、ジャパン 「すべてのゲストに楽しんでもらえるパークであること」、そのためにできることを考えたい。 レゴブロックをテーマにした体験型屋外テーマパーク、レゴランドジャパン。 様々なゲスト(お客様)が訪れるレゴランドジャパンで、配慮が必要なゲストへの対応やその考え方について、オペレーションの岡村さん、アトラクション運営担当の山下さん、早田さんにお話を伺いました。 「どうして乗れないの?」、障害のあるゲストからの質問に戸惑う現場の新人スタッフ。 障害のあるゲストから寄せられる問い合わせにどう対応すべきか悩む新人スタッフに、「合理的配慮の提供」は漠然としたイメージはあるものの、状況に応じてその配慮も異なるため、適切な対応方法を上手く伝えることができませんでした。 「公平な環境をつくること」の一言で明確になった合理的配慮。 「合理的配慮の提供」とは何かが理解できたのは、センターの出前講座で聞いた「公平な環境をつくること」、の一言が大きかったです。「こういう時はこう対応する、という考え方では、何通りものパターンが必要だが、合理的配慮の本質・軸さえ捉えていれば、個別の対応に戸惑うことはない。」ということに気づくことができました。 「スタッフの意識を変えていこう」という思いで考案した対応トレーニング。 接客にあたるスタッフ全員が「合理的配慮の提供」を意識し、「どうしたら楽しんでいただけるか」という視点で捉えることができるような対応トレーニングを独自で考案し、実施しています。アトラクションの利用制限上、断らざるを得ない時は、一律に「乗れません」ではなく、楽しんでいただくために何が提供できるのかを考えられるスタッフの育成を目指しています。 環境充足にも尽力を。 パーク内は、ユニバーサルデザインの設備がすでに充実していますが、お子様や車いす利用者の目線での使いやすさの更なる検証を重ねるなど、すべてのゲストにたのしんでもらえるように、環境充足にも、引き続き取り組んで行きたいと考えています。 今回の取材を通じて。 「すべてのゲストに楽しんでいただけるパーク」を目指す、熱い思いが伝わってきました。 22ページ 5、参考情報 (1)名古屋市の普及啓発事業  障害のある人もない人も共に生きるための障害者差別解消推進条例ガイドブック 名古屋市の条例の内容をわかりやすく解説するとともに、障害の特性と、それを踏まえたサポート方法についても具体的に説明しています。 こんなときどうする? 障害を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック 障害及び障害のある人への正しい理解のため、各障害の特性とこれまで実際に障害者が体験した事例などをもとに、適切な接遇応対の例を紹介しています。 こんなときどうする? 一歩踏み出す勇気をあなたに フミダスドーガ 障害の特性や、その障害のある人が困っていること、具体的なサポートの方法を知り、障害や障害のある人への理解を深めるための障害種別ごとの8本のアニメーション動画です。 「発見!心のバリアフリーの種」へん MCキャラクター「フリア」がナビゲートする動画です。「条例」や「障害のこと」を専門家に聞いたり、まちを巡って様々な発見をしていきます。 「せやろがいおじさん」篇 YouTubeでお馴染みの「せやろがいおじさん」が障害者差別解消やこころのバリアフリーを独自の口調で語る動画です。 上記普及啓発事業について、詳しくは名古屋市公式ウェブサイトよりご確認ください。 https://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000121991.html 障害者理解に関する講師派遣事業 市民・事業者が、障害及び障害のある人への理解を深めるとともに、社会にある障壁を取り除くための配慮や、サポート方法などを学ぶことができるよう、講師(当事者講師を含む)を派遣し、講演や実体験を通じた学びの機会を提供します。 23ページ (2)内閣府の関連ウェブサイト  障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト 合理的配慮の提供や不当な差別的取扱いの禁止など、障害者差別解消法により定められている事例などを紹介しています。 https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp 合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ) 各省庁・自治体・民間事業者などが作成した合理的配慮の提供に関する事例集などを紹介しています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/index.html 障害者差別解消に関する事例データベース 「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」、「環境の整備」について、行政機関や事業者などの相談窓口に寄せられた具体例を、障害種別などに応じて検索できます。 https://jireidb.shougaisha-sabetukaishou.go.jp 合理的配慮の提供等事例集 内閣府がまとめた合理的配慮の提供に関する事例集で、合理的配慮の提供事例や環境の整備事例のほかに、合理的配慮の不提供には当たらない事例も紹介しています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/example.html 障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針 民間事業者向けの対応指針です。「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」について適切に対応するため、事業分野ごとに策定されています。 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioshishin.html 事業分野相談窓口(対応指針関係) https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/pdf/soudan/taiou_shishin.pdf 障害を理由とする差別の解消の推進、相談対応ケーススタディ集 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/case-study.html リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます!」 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet-r05.html 24ページ 6、障害者差別に関する相談窓口 名古屋市障害者差別相談センター 障害のある人やその家族、事業者の皆様から、障害者差別に関する相談を受け、関係機関と連携・調整を行いながら、差別の解消を図ります。お困りのときはご相談ください。 相談受付日時、 月曜日から金曜日、第3土曜日(祝日・年末年始を除く) 9時から17時(水曜日は20時)まで 住所、〒462-8558、名古屋市北区清水四丁目17番1号名古屋市総合社会福祉会館5階 電話、(052)856―8181 ファックス、(052)919―7585 Eメール、inclu@nagoya-sabetsusoudan.jp ホームページ、https://nagoya-sabetsusoudan.jp 地域の相談窓口 障害を理由とする差別に関する相談は、各区役所・支所、保健センター、障害者基幹相談支援センターでも受け付けています。  【各窓口の所在地・連絡先】 各区役所福祉課・支所区民福祉課 https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/shiori/soudan/fukushikakari.html 各保健センター保健予防課 https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/shiori/soudan/hokencenter.html 各区障害者基幹相談支援センター https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/shiori/soudan/seikatsu.html おわりに この事例集の作成にあたり、取材や記事の提供などにご協力いただきました事業者様をはじめ、関係者の皆様に、心よりお礼申し上げます。 裏表紙 これって、差別? ボリューム2 障害を理由とする差別解消に関する相談事例集 令和6年3月発行 発行:社会福祉法人、名古屋市社会福祉協議会 名古屋市障害者差別相談センター センターホームページhttps://nagoya-sabetsusoudan.jpからダウンロードできます。 当センターは、名古屋市からの委託を受けて、社会福祉法人、名古屋市社会福祉協議会が運営しています。 この冊子は、古紙パルプを含む再生紙を使用しています。