名古屋市障害者差別相談センター センターニュース第10号 発行月 令和2年11月 「障害者差別解消法施行3年後見直しに関する意見」が取りまとめられました。 障害者政策委員会において令和2年6月に、障害者差別解消法施行3年後見直し検討の結果として、みだしの意見書が取りまとめられました。 障害者差別解消法が平成28年に施行されて以降明らかとなった制度・運用上の課題について、その現状や障害当事者や事業者の考え方、そして障害者差別解消に向けた今後の対応の方向性などが整理されて示されています。 「障害者差別解消法施行3年後見直しに関する意見」の主な概要 【3年後見直しに当たっての基本的な考え方】 @ 条約の理念の尊重及び整合性の確保 A 地域における取組等の実情を踏まえた見直し B 関係者間の相互理解の促進 【個別の論点と見直しの方向性・考え方】 @ 差別の定義・概念の明確化 A 事業者による合理的配慮の適切な提供の確保、建設的対話の促進、事例の共有等 B 地域における相談・紛争解決体制の見直し、相談対応等を契機とした事前的改善措置(環境整備)の促進 C 都道府県による市町村の地域協議会の支援、複数の地域協議会の間での情報共有等の促進 詳しい内容や議事録等は、内閣府のHP内にある障害者政策委員会のページから見ることができます。 お知らせ 毎年2月に開催していた「市民講演会」ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今年度は中止となりました。楽しみしていただいていた皆さまには、ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。 このニュースへのご意見・ご質問など、ぜひお寄せください! センターへの相談事例 〜コロナ禍における相談 今年度上半期(4〜9月)の差別に関する相談件数は12件でした。昨年の同時期(31件)よりだいぶ相談が減少しています。新型コロナウイルスの関係で、外出が制限されたことなどが要因として考えられます。そのようななかで、新型コロナウイルスに関連する相談も寄せられています。 【ケース1】視覚障害のAさん わたしは、いつも図書館で読んでほしい資料をCDやカセットテープに録音して自宅に郵送してもらう「音訳サービス」を利用しています。 新型コロナウイルスの関係で休館していた図書館が、部分的に開館したと聞いたので、音訳サービスを利用しようと図書館を訪問しました。すると、「今はまだボランティアが集まれないので、サービス提供はできない」と断られてしまいました。 センターでは、感染拡大防止を理由にボランティアが集まることができず、サービスを中止にしたことは、正当な理由にあたると判断しました。しかし、合理的配慮の提供という点からは、可能な範囲で個別の配慮や代替策の検討を行う必要があります。センターが図書館に確認したところ、すでに相談者からの要望を受けて内部で協議し、対面読書室にはひとりで入り録音を行うなど従来の方法によらない形で再開することに決まったという説明がありました。今回の相談は、障害のある方が求めた合理的配慮に対し、事業者ができる範囲でルールを変更し適切に対応した事例でした。 【ケース2】発達障害のBさん わたしは、障害やアレルギーがあって、マスクがつけられません。 先日、ドッグランの施設を利用しようとした際、障害があってマスクがつけられないと説明したのですが、フェイスシールドやハンカチで口を押さえるのも認められず、ドッグランを利用させてもらえませんでした。 感染拡大防止のためであっても、障害によりマスク着用ができない客に対して、フェイスシールドやハンカチによる代用も認めず利用不可とするのは差別的取扱いの疑いがあると判断しました。 センターが施設のお客様相談室に確認したところ、ハンカチで口を押さえるのは感染拡大防止策としては不適切としているが、フェイスシールドであればマスクの代用として認めていること、この日は相談者がフェイスシールドを持っていないため利用できなかったことがわかりました。今回の相談は、障害を理由とする差別ではなく、行き違いから生まれた誤解によるものでした。きちんとした話し合いが行われていれば、起こらなかった相談とも言えます。 このほかにも、「身体接触不可となり、今まで受けていた配慮が得られない」「感染が拡大して、ヘルパーが来てくれないのではないか」「マスクや消毒剤を買いに並んでも視覚障害があると横入りされたり抜かれたりして買うことができない」といった新型コロナウイルスに対する不安や心配ごとの相談がありました。 出前講座のご報告  ユニバーサルデザイン講座を当事者相談員が実施! 令和2年9月23日(水)に、中村区の日比津小学校にて3年生(66名)を対象に、ユニバーサルデザイン(UD)講座を実施しました。 はじめに、障害の社会モデルや障害者差別解消法についてお話しした上で、実際に段差(10p)を前にしたセンター当事者相談員(車いす使用)が、人の協力を得たり、スロープ代わりにマットを敷くなどして社会的障壁を解消する様子を見ていただきました。段差を乗り越えようと奮闘する職員に、児童の皆さんからの「がんばれー」という熱い声援が会場に響きました。そして、身の回りにあるUDや障害のある人に関するマークなどについて、楽しく学んでいただきました。 講座後には、「障害のある人が困っていたら助けてあげたいです。」、「UDが色々なところに使われていてびっくりしました。もっと探してみたいです。」等とても素直な感想をいただきました! 今回の出前講座は、会場の体育館を開け放ち、児童の皆さんはマスクの着用とソーシャルデイスタンスの確保、講師についてはマイクを使用者の変更ごとに消毒するなど、新型コロナウイルス感染拡大防止にも配慮し実施しました。 当事者相談員からひと言 <講座内容について>(講座内容の中で特に意識して伝えていること) センターでは、主に障害者差別解消法に関する理解や知識を深めていただくために、事例も交えた分かりやすい講座を実施しています。受講者に合わせて、時にはユニバーサルデザイン講座であったり、ボッチャを通じて簡単な合理的配慮を体験する講座を行ったりもしています。特に、私が講義をする場合には、自身の体験を用いて障害のある方が普段どのように考え、どのような生活をしているかを交えながら社会的障壁、合理的配慮など説明しています。  <講座を通してお伝えしたいこと>  2007年「障害者権利条約」署名を機に、「障害者差別解消法」施行などの法整備に伴い、少しずつ障害者を取り巻く環境や意識が変わってきています。しかしながら、未だに偏見や思い込みなどによる差別に関する相談がセンターにも寄せられています。 この講座を受講される皆さまには、まずは障害について「知ること」からはじめていただきたいと思います。 そして、障害が有る無しに関わらずコミュニケーションを取りながら、相互理解を深めていくことの大切さをお伝え出来たらと思います。 ジャパンタクシー乗車の手引き作成中! 最近街で見かける新しい形のタクシーをご存知ですか? これは平成29年10月にトヨタ自動車が発売したジャパンタクシーというユニバーサルデザインのタクシーです。 令和2年3月末の時点で、愛知県内にあるタクシーおよそ八千四百台のうち、ジャパンタクシーは約1千台と、まだ全体の1割程度ですが、今後タクシーはこの車両に切り替わっていきます。車いすのまま乗車できるはずなのに何故このジャパンタクシー、発売当初は「車いすのままで乗車できる」として注目されました。 しかし、「手を挙げたのに素通りされた」、「電動車いすは乗れないと言われた」、「車いすは乗せたことがないから責任とれないと言われた」など、乗車トラブルに関するご相談がセンターには寄せられています。 実はこのジャパンタクシー、「誰でも・どこでも」乗車できる、というわけではなかったのです。 ジャパンタクシーに車いすのまま乗車するには、スロープ設置スペースが必要なため駐停車できる場所が限られます。また、必要なスロープ設置や車いす固定などの作業が煩雑で時間がかかるほか、車いすのサイズが大きいため通常の前向き乗車ができない場合、シートベルト着用ができない横向きでの乗車を求められるなど、様々な課題があり、全国的な問題にもなっています。 上記のような車両の問題のほか、運転手の車いす乗車に対する知識や経験不足も課題の一つではありますが、その他にタクシー事業者と利用者に認識の違いがあることも乗車トラブルの原因としてあるようです。 「どんな車いすならジャパンタクシーに乗せれるの?」「どうしたらジャパンタクシーに乗れるの?」といった、乗せる側・乗る側の共通認識として「ジャパンタクシー乗車の手引きとなるものをつくろう!」と、課題の当事者であるタクシー事業者(名古屋タクシー協会)と車いすユーザー障害当事者団体)、名古屋市にはたらきかけ、課題解決ために現在話し合いを重ねています。 今後、話し合いをもとに手引き作成をすすめ、その後は研修会を実施するなど、車いすユーザーやタクシー事業者に対し、普及啓発を広げていきたいと考えています。